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「契約書を速く作る」だけではない。Document Automationが法律実務にもたらす本当の価値
Document Automationの基本、海外プロダクト、日本での活用可能性を法律事務所・法務部の視点で整理します。
LegalTech Media編集部
編集部

リーガルテックの文脈で「Document Automation」という言葉を見かける機会が増えています。
日本語では「文書自動化」「契約書作成自動化」と訳されますが、単に契約書のひな形に会社名や日付を差し込むだけのツール、と捉えると少しもったいない領域です。
Legaltech Hubでは、Document Automationを、弁護士がより速く、より一貫性をもって文書を作成するためのソフトウェアとして紹介しています。大きく分けると、質問に答えることで文書を生成するQ&A型と、条項を選択しながら文書を組み立てるClause-based型があります[1]。
つまり本質は、「文書作成を楽にすること」だけではありません。法律事務所や法務部が蓄積してきたナレッジ、判断基準、レビュー観点を、再利用可能な形に変換することにあります。
従来の契約書作成では、過去案件のファイルを探し、似た契約書をコピーし、当事者名や金額、期間、準拠法、解除条項などを手作業で修正する、という流れが一般的でした。
このやり方は柔軟ですが、作成者によって品質がばらつきます。古いひな形や不適切な先例が再利用されるリスクもあります。単純な置換漏れや、条項間の不整合も起こりやすい。
Document Automationは、こうした作業を「質問」「条件分岐」「テンプレート」「条項ライブラリ」に分解し、一定のルールに従って文書を生成する仕組みです。これにより、作成時間の短縮だけでなく、品質の標準化、レビュー工数の削減、ナレッジ管理の高度化が期待できます[1]。
海外で使われている主なプロダクト
Legaltech Hubでは、代表的なプロダクトとして、Contract Express、HotDocs、Avvoka、Clarilis、Clausebase、Draftwiseなどが挙げられています[1]。ここでは3つを紹介します。
Contract Express
Contract Expressは、Thomson Reutersが提供する法務向けDocument Automation製品です。Legaltech Hubでも、HotDocsと並んでこの領域の業界標準的な存在として紹介されています[1]。
特徴は、法律文書向けに設計されたテンプレート作成と、質問票ベースの文書生成です。Thomson Reutersの製品ページでも、ガイド付き質問票を使って単体文書やドキュメントスイートを作成できることが説明されています[2]。日本の法務部でいえば、NDA、業務委託契約、取引基本契約、販売代理店契約など、反復して作成される契約類型で活用しやすいでしょう。
Avvoka
Avvokaは、法律事務所や企業法務向けのDocument Automationプラットフォームです。Legaltech Hubでは、コーディング不要でカスタム法律文書を生成でき、構造化された質問票や取引情報のアップロードを通じて文書作成を支援するプロダクトとして紹介されています[3]。
文書作成だけでなく、交渉、電子署名、データ分析までを含めた契約プロセス全体を視野に入れている点が特徴です[3]。
日本の法律事務所であれば、スタートアップ投資、M&A、ファイナンス、不動産、労務など、一定の型がありながら案件ごとの調整も多い分野で活用余地があります。法務部では、事業部門によるセルフサービス型の契約書作成にも向いています。
Clarilis
Clarilisは、複雑な法律文書セットの自動化に強みを持つプロダクトです。Legaltech Hubでは、マネージドサービス、事前自動化テンプレート、またはそのハイブリッドにより、法律事務所や企業向けに複雑なドキュメントスイートを扱うサービスとして紹介されています[4]。
単体の契約書だけでなく、M&A、投資、ファイナンス、不動産リース、リーガルオピニオンなど、複数文書が相互に関連する「ドキュメントスイート」の自動化を意識している点が興味深いところです[4]。
たとえば融資案件では、金銭消費貸借契約、担保設定契約、保証契約、取締役会議事録、委任状、法律意見書など、複数の文書が同じ取引情報を共有します。案件情報を一度入力し、それを複数文書に反映できれば、単なる時短ではなく、文書間の整合性を担保する仕組みになります。
日本にも同様のプロダクトはあるか
日本にも、同じ思想を持つプロダクトや、Document Automationに近い使い方ができるサービスは存在します。
たとえばLegalOnテンプレートは、弁護士監修の契約書、規約、社内書式などのひな形を提供し、契約書作成の負担軽減と品質向上を支援しています[5]。ゼロからドラフトするのではなく、信頼できるひな形を起点にするという意味で、文書作成の標準化に近い役割を担います。
LAWGUEは、契約書・規程・開示文書などの作成、検索、レビューを効率化するクラウドドキュメントワークスペースです[6]。過去文書や条項を探し、編集やレビューの履歴をナレッジとして蓄積する発想は、Clause-based型のDocument Automationと相性がよい領域です。
また、クラウドサイン MAKE for kintoneのように、kintone上の情報から契約書や帳票を自動生成し、そのまま電子契約につなげるサービスもあります[7]。これは法務ナレッジの自動化というより、契約作成から締結までの業務フロー自動化に近い使い方です。
日本の法律事務所・法務部はどう活用すべきか
日本でDocument Automationを導入する場合、最初から大規模なシステム導入を目指す必要はありません。まずは「どの文書を自動化する価値があるか」を見極めることです。
向いているのは、作成頻度が高い、ひな形がある程度固まっている、入力項目が明確、作成ミスやレビュー漏れのリスクがある、といった文書です。典型例は、NDA、業務委託契約、雇用契約、取引基本契約、株主総会・取締役会関連書類などです。
法律事務所であれば、特定のプラクティスグループでよく使う書類から始めるのが現実的です。法務部であれば、事業部門からの依頼が多く、法務判断の余地が比較的小さい契約類型から始めるのがよいでしょう。
生成AIとの関係も重要です。生成AIは、自然文の作成や要約、条項案のたたき台作成に強みがあります。一方、Document Automationは、承認済みのひな形やルールに基づいて、再現性のある文書を作ることに強みがあります。
法律実務では、「それっぽい契約書」では足りません。どの条項を、どの条件で、誰の責任で入れるのか。その判断過程が説明可能であることが重要です。
Document Automationは、法律事務所にとっては、知見の標準化、若手教育、収益性改善、クライアントサービス向上の手段になります。法務部にとっては、事業部門へのセルフサービス提供、契約作成のリードタイム短縮、レビュー品質の安定化、ナレッジの属人化解消につながります。
まずは、よく使う契約書を1つ選び、その作成プロセスを分解してみる。Document Automationは、そこから始まります。
参考
[1]Legaltech Hub: Document Automation
[2]Thomson Reuters: Contract Express
[3]Legaltech Hub: Avvoka
[4]Legaltech Hub: Clarilis
[5]LegalOn Technologies「LegalOnテンプレート」
[6]LAWGUE公式サイト
[7]クラウドサイン MAKE for kintone公式ページ
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